元相談者が弁護士を訴え、弁護士が元相談者を訴え 1審の証拠採用状況にみる裁判の公平さとは ー東京地裁

 相談者が弁護士懲戒請求(戒告処分)を行ったうえ、弁護士に対し着手金の返還などを求めた本訴事件、また、弁護士がインターネット上の様々な批評について相談者に名誉毀損の賠償を訴えた反訴事件。

 結果は、弁護士が2度の相談すっぽかしの件について相談者に3万円を支払い、相談者が弁護士に対し名誉感情侵害につき5万円を支払う、という判決となった。差し引き、相談者が弁護士に2万円支払うということである。 <平成23年(ワ)17843号、29638号>

 判決がどのように行われたか、証拠採用状況を検討してみる。採用証拠の概要は下図のとおり(上表=元相談者が提出した書証番号の一覧。下表=弁護士が提出した書証番号の一覧*1

 提出する必要性の薄い証拠を提出していた点については、弁護士も相談者も同じだが、東京地裁が採用した証拠は、弁護士が提出したものがほとんどである。このように、採用された数を比べてみると、裁判の公平性については大きな疑問が残るようだ。

  なお、弁護士が提出した乙1~乙252の書証のうち乙99~252(相談者のツイッター上の発言)は、弁論が終結する1週間ほど前に相談者の自宅に届き、相談者は反論を準備していたが、裁判所は相談者に反論の機会を与えるでもなく結審したため、何も反論できないまま相談者の不法行為が認定された。

 弁護士は相談者にツイッター上の発言について苦情を伝えてきたり、削除要請などをすることもなかったが、数ヶ月おきにツイッターを検索してダウンロード保管しており、結審の直前に証拠として提出したということである。すさまじい執念であろうが、その証拠を中心に判決を行った裁判所の判断は、いかほどのものだろう。

 なお裁判長は倉知真寿美裁判官。弁護士は損害300万円を求め、相談者は着手金50万円などの返還を求め、双方が控訴した。

※ 太文字の書証番号は、事実認定に使用された証拠。

※ 色枠の書証番号は、判決書の中で特に言及された証拠。

   黄=相談者が弁護士に相談する以前に取得していた文書

   青=弁護士と相談者のあいだの調停や懲戒請求に関する文書

   緑=弁護士と相談者の主張の趣旨に関する文書  

*1:

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