世界81か国・裁判官数ランキング

国連薬物犯罪事務所(UNODC)は2015年4月13日、「犯罪及び刑事司法統計」( Crime and criminal justice statistics)を発表した。以下の表は、そのデータから国別の人口10万人あたりの裁判官数のランキング(2011-2013年平均)を作成したものである。

1位はリヒテンシュタイン(180人)、日本は81か国中74位(2.9人)。

日本は司法改革により法曹人口は急増したが、国際的に見ればまだまだ裁判官が少ない。2014年の裁判官定員法の改正で裁判官の定員は3,731人と増えてはいるが、それでも1位上がるかどうか、というところである。

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 ※ なお、2010年米国司法統計(State Court Caseload Statistics) によれば、最高裁・高裁・地裁を合わせると13,230人(人口10万人あたり4.29人)で、それ以外に限定事件裁判所(破産裁判所など)もある。米国 は最下位となっているが、これは最高裁と高裁裁判官のみを数えており、実際の10万人あたりの裁判官数は日本よりも高いことになる。

 

最高裁司法制度改革審議会の2001年の意見書で「向後10年程度の期間に500名程度の裁判官の増員が必要」と述べ、たしかに10年間で530名、裁判官以外の裁判所職員は300名ほど増加した。しかし、2005年に知財裁判所が設立され、同裁判所が2021年に東京都目黒区に予定されている新庁舎へ移転する計画もある。また知財事件数は裁判数全体の0.1%程度と言われており、さらに2015年特許法改正職務発明特許権は会社のものとなり裁判が起こしにくくなるであろうところ、増員分は少なからず知財裁判所にあてられるはずである。すると知財以外の裁判所については状況が改善されたというのは早計だろう。

 もっとも2003年に裁判の迅速化に関する法律が制定され、最高裁判所データブック2013によれば日本の裁判所の平均審理期間は民事で7.8か月、刑事事件で3.0か月となっており、現在は国際的にみればそれほど長いというわけではない(イギリス・フランス・ドイツ等のほうが長い)。

  ただ、その一方で、志布志事件の刑事・民事裁判のように、何年もかけて審理を行っている裁判もある。こうした裁判事件はしばしばメディアが追っていることが多いが、裁判の長期化の理由が取材されていることは少ない。最高裁判所にも説明責任があるはずである。 裁判官が少ない状況でありながら、特定の事件を不自然に長期化させるような訴訟指揮が適切であると言えるだろうか。